03.バックストーリー

はじめに


まずはじめに、私たちがまとめた「トランスメディアデータ集」においてバックストーリーは、
「作品内で展開される物語の前提になっている背景事情はどのように設定されているのだろうか。それは必ずしも明示されているわけではない。」とされています。
バックストーリーとはメインストーリーの裏で同じ世界線に存在する物語のことを指します。バックストーリーはメインストーリーに隠されていますが、物語が進むにつれ徐々に明かされるものが多くあります。バックストーリーは作品がある世界に至るまでの過程であり、作品に深みを加えるものとなっています。バックストーリーは一種の伏線のように扱われることもあり、よってほとんどの作品、特に現在人気を博している作品にはバックストーリーが存在しており、同じ種類系統の作品であってもバックストーリーはすべて作品によって違うものであと言えます。

ー目次ー
◆バックストーリーの重要性
◆バックストーリーの性質・分類
◆バックストーリーの作り方
◆まとめ
◆参考文献

バックストーリーの重要性


バックストーリーは作品の表には中々現れないオーディエンスを惹きつける魅力であったり、作者の真意であると考えます。見えないからこそオーディエンスの興味をよりそそるものであり、よりオーディエンスをその作品にのめり込ませることができるものであると言えます。そこにバックストーリーの重要性があるのではないかと私は考えます。基本的にバックストーリーは隠されているものであり、オーディエンスにその隠されたバックストーリーを考察させることで、オーディエンスに作品の深みにハマらせる役割があるのではないかと考えます。これらのことから、バックストーリーの重要性は作品に深みを与え、オーディエンスを惹きつけるということがバックストーリーの最も重要なポイントであると言えます。

◇バックストーリーの性質・分類


まず、バックストーリーには隠されているもの、隠されていないものが存在していると私は考えます。隠されているもの、そうでないものは、作品のジャンルによって分類できるのではないかと考察します。基本的には作者によって、人為的に作られた物語や作品はバックストーリーが隠されているものが多く、媒体でいうと漫画、小説などの作者が存在しているものは隠されているものがほとんどであると言えます。例えば、進撃の巨人では物語の序盤では巨人の謎などはあまり明かされず物語が進むにつれ伏線が回収され謎が明かされます。物語が長編になればなるほど伏線を貼ることができ、バックストーリーが隠されていく、一方、一話完結の日常系作品(サザエさんなど)はバックストーリー(伏線)を多く隠すのは難しい作品のジャンルであると言えます。
対して女性アイドルグループやジャニーズはバックストーリーが隠されていないまたは、バックストーリーとメインストーリーの区別が難しいジャンルであると考えます。グループが結成された経緯や裏事情などは見えにくいものではありますが、最初から意図して隠されているものではなく、例えば日向坂46はデビューするまではけやき坂46(ひらがなけやき)として活動していましたが、その苦悩や葛藤、デビューするまでの話などはファンの間では語られてきたバックストーリーです。一般の人々(彼女たちのファンでない人々)からは見えにくいものですが、ストーリーとしては隠されているわけではなく、ドキュメンタリー映画として公式に語られているストーリーであるため隠されていないと言えます。そのほかの坂道グループもそれぞれドキュメンタリー映画としてバックストーリーをメインとして物語を構成している作品が存在しています。アイドルなどはプロデューサーはいてもストーリーを考える作者は存在していないため、意図して作られるというより当事者たちや、関わるオーディエンスの行動でストーリーが構築されていくという特殊なストーリーの性質があるのではないかと考えます。よってアイドルグループのどのバックストーリーはファンではない人々には見えにくいものではありますが、隠されていないとジャンルである言えます。
次に、バックストーリーは強い作品と弱い、または分かりづらい作品があるのではないかと考えます。現在人気を博している長編の漫画原作作品、推理小説などは伏線などバックストーリー的要素を多く盛り込めるため、バックストーリーが強い作品と言えます。対してバックストーリーが弱い、または分かりづらい作品は、作中でバックストーリーが明かされないものが多いと考えます。それらのバックストーリーが明かされない作品はファンによる二次創作や推測、都市伝説などの広がりによって、作品が発展することがあります。例えばエヴァンゲリオンはアニメの中で全くバックストーリーが明かされないため、多くのファンがストーリーや設定の考察を行っています。アニメ放送から25年経った現在、YouTubeなどに多くの考察動画や、解説動画がアップされています。このように公式のストーリーの中で明かされるものではなく、ファンが考察したものが後付けされていく作品も存在しています。逆に二次創作が禁じられブランド管理が徹底されている作品(サンリオなど)はバックストーリーの観点においては発展しづらいという傾向もあります。
最後に、バックストーリーの延長線上にスピンオフが存在します。スピンオフは主人公以外の主要キャラが主人公となり本編では語られないストーリーを描いたものです。人気作品には多くスピンオフが存在していますが、作者以外の第三者、または作者に依頼された人物がスピンオフを担当することが多々あります。また、漫画作品ではノベライズ版なども本編とは直接影響のないストーリーとして描かれることも多くあります。

◇バックストーリーの作り方


バックストーリーの作り方としては、キャラクター論に通づるものがあります。バックストーリーを作るときは、まずストーリー全体で考えるより、登場人物で考えた方が分かり易く作ることができます。
主人公のバックストーリーはメインストーリー上で語られることが多いので、作品のストーリーではスポットライトが当たらない登場人物にもストーリーは存在しているということが意識するべき点です。メインのキャラクターにスポットライトが当てられている時間軸の裏に登場していないキャラクターの時間軸があることを考えて、のちにメインストーリーとの辻褄が合うようにサブキャラクターのバックストーリーを構築することが物語を破綻しないことにもつながるポイントです。メインの登場人物であっても最初の頃はスポットライトを当ててはいけない登場人物も存在します。分かり易い例でいうと悪役(犯人)のバックストーリーは最初に明かしてしまうとオーディエンスが感情移入してしまい、主人公との立場が逆転してしまう可能性があります。物語を展開する初期には悪役の過去や行動原理などは明かさずに徐々に明かしていくことがバックストーリーを作る上では重要になります。しかし悪役がなぜ主人公と敵対するようになったか(もしくは主人公が悪役と敵対するようになったのか、犯人はなぜ犯行に至ったのか)という動機は必ず必要になります。理由は「ただの気まぐれ」でも構いませんが、一番いけないのは作者が具体的な悪役の行動原理を決めていないことです。これがないと悪役のセリフや行動に説得力がなくなってしまい、キャラクターやストーリーの魅力がなくなってしまいます。悪役の胸中を作中のどの場面で明かすかは別として、悪役のバックストーリーは必ず作らなければならないものです。この項目の初めで述べたように、キャラクターごとのバックストーリーはキャラクター論に通ずるものがあります。作品全体のバックストーリーは物語の作り方と深くリンクしています。よって、バックストーリーは物語論の一部としても考えられるという見方もあると私は考えます。

◇まとめ


これまでの項目を簡単にまとめると、バックストーリーは作品に深みを与えるとともにオーディエンスの興味を惹きつけるものであると考えます。さらにオーディエンスによる考察や二次創作によって発展する作品もあり、バックストーリーはトランスメディア作品において作品とオーディエンスを繋ぐうえで重要な役割を果たしていると言えます。バックストーリーは作品の人気に直結するものであると言っても過言ではなく、推測、創作などを通じてオーディエンスのマニア心理をくすぐる要素であると考えられます。バックストーリーは作品に大きな影響を与える要素であるとともに、バックストーリーはオーディエンスの参加や二次創作、派生作品などにも影響をあたえるため、作品を大きく発展させるためには不可欠な要素であると私は考えます。

◇参考文献


0から始める小説の書き方講座


https://ncode.syosetu.com/n3716ba/27/

エヴァンゲリオン考察動画


https://youtu.be/TeoFnVoiQAs

担当者:福田一樹

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