01.世界構築

はじめに


オーガニックなトランスメディア作品の中核には独特の世界観を持つ物語世界が構築されています。
そこで、今回は物語における世界構築(設定)を見ていきます。

ー目次ー
◆設定の重要性
◆物語の型と世界構築
◆世界構築のさまざまな要素
◆物語世界の整合性問題
◆まとめ

設定の重要性


まず、物語というものは設定がないと全く進行しません。例えば、2人の人間がいて相手の名前を呼ぶだけでも「名前」という設定が必要になり、2人が居る場所がどこであるかも決めなければなりません。更にそこにいる2人の服装を決めるために、時代設定や人物設定が必要になります。このように「いつ・どこで・誰と・誰が・なぜ・何をして・どうなった」という要素のうち、最低限「いつ・どこで・誰と・誰が」という部分に設定というものが直接関わってきます。そして「なぜ・何をして」の部分には人物の性別や性格、趣味、趣好などが影響してくることになります。そういったように物語の構成を決める上で重要な項目であることから、一度設定をしたものは気軽には変えることができません。上記から物語における設定の重要性が確認できたと思います。

物語の型と世界構築


物語は下記のいずれかの型で構成されています。物語の型はキャラクターの感情の上下からなっているとされており、世界構築の基本要素となっています。

・立身出世型(継続的な上昇):主人公が継続的に幸福になる物語
(例)一寸法師


大人の小指ほどの男の子は、針の刀とお椀の船を持ち京へ行き小さいながらも元気な姿が気に入られ、大臣の娘の家来になりました。数年後、都に赤鬼が現れ他の家来が逃げる中、姫を守るため赤鬼立ちはだかるが鬼に捕まってしまいます。しかし鬼のおなかの中を針でつつき、参った鬼は、一寸法師を吐き出し、悪さは二度しないと言いました。逃げていった鬼が置いて行った打ち出の小槌によって一寸法師の体は人並みに大きくなり、鬼退治の功績が認められて姫と結婚し故郷に戻り幸せに暮らしました。

・悲劇(継続的な下降):主人公が継続的に不幸になる物語
(例)ロミオとジュリエット


お互いに敵であると思っている旧家の生まれのロミオとジュリエットが恋に落ちます。ロミオは友人の敵討ちのため殺人を犯して街から追放されました。悲しむジュリエットに対して、両親は名門貴族の息子と結婚できる機会を用意しますが、ジュリエットは縁談を拒否しました。そして両親からは従わなければ勘当すると宣言されてしまいます。孤立したジュリエットは修道僧に「42時間仮死状態になる薬を飲んで、霊廟に葬られた後目覚めたときに迎えにきたロミオと逃げなさい」と告げられました。しかしジュリエットが仮死状態だとは知らずにロミオは毒薬を飲み、後追い自殺をしました。ジュリエットは目覚めると横で毒を飲んで倒れているロミオの姿を見て、ロミオの後を追って自殺をします。

・起死回生(下降から上昇):主人公がいったん不幸に落ちた後、努力して這い上がる物語
(例)猿蟹合戦


おにぎりを持ったかカニのもとへ、柿の種と交換してほしいとずる賢い猿が来ます。拒んだカニに対して、「柿の種を植えれば成長して実がたくさん出来ておにぎりより得だよ」と言い交換が成立しました。柿の木は成長し、たくさんの実がなりましたが、カニは手が届かず猿が代わりに取ってくれると言いました。しかし、猿は自分だけ食べてカニには熟していない柿を投げつけました。その衝撃でカニは甲羅が割れてしまい、子ガニが生まれましたが親ガニは死んでしまいます。子ガニは仇を討つため、栗と臼と蜂と牛糞を家に呼び寄せて計画を練りました。そして皆で協力して猿を懲らしめました。

・失墜(上昇から下降):いったん主人公が幸福になったあと、軽率や傲慢さによって一気に失墜する物語
(例)ドラえもん


ある出来事でジャイアンにいじめられたのび太にドラえもんが秘密の道具を貸します。そしてその道具を使いジャイアンを懲らしめます。しかし、のび太はドラえもんから借りた道具の説明を最後まで聞かず、調子に乗ってしまいます。その結果、最後はのび太が痛い目に合います。

・シンデレラ(上昇➡下降➡上昇):主人公に一時的な幸福が訪れた後、効果が切れて元の不幸な状態に戻る。しかし、幸福に恵まれることで、再び幸福な人生を送る物語
(例)シンデレラ


幼い頃に母親を亡くしたシンデレラは父親が再婚した継母、その連れ後の2人の姉と一緒に暮らしますが、召使のように扱われました。
ある時、国の王子が開く舞踏会に姉たちは参加をしますが、舞踏会に行こうとしたシンデレラに対して家の掃除や片づけを命じました。悲しみに暮れたシンデレラの前に魔女が現れ、魔法を使って馬車、白馬、ドレス、ガラスの靴を用意しました。そして「深夜0時に魔法が解けてしまうから、それまでに帰ってきなさい」と魔女はシンデレラを舞踏会へ送り出しました。そして舞踏会に現れたシンデレラの美しさに王子は虜になりました。深夜0時の鐘が鳴り慌てて逃げ出したシンデレラを王子は追います。しかし消えてしまったシンデレラが落としてしまったガラスの靴を手掛かりにシンデレラを探し出します。誰もガラスの靴がピッタリ合う人がいない中、シンデレラが試してみたいと進み出ました。そして、ガラスの靴をピッタリと履くことができたシンデレラは王子様と結婚をしました。

・オイディプス(下降➡上昇➡下降):主人公に一時的な不幸が訪れるが、幸運や他者の助力によって、何とか逃げ延びる。しばらく幸福な生活を送るが、より大きな不幸に直面してしまう。
(例)オイディプス王


ラーイオス王は預言者に「子がお前を殺し、お前の妻との間に子をなす」と告げられて、家来に殺すように命じました。しかし家来は殺さず、子を森の中に捨てました。そして、その子はある国の王夫妻に拾われて「オイディプス」と名付けられて大事に育てられましたが、実の子どもではないと知ってしまいました。ある日怪物の出現により、向かったデルポイで、ラーイオス王とオイディプスが行き合ました。しかし、ちょっとした行き違いから父とも知らずオイディプスはラーイオス王を殺してしまいます。オイディプスは怪物を倒した英雄としてラーイオス王の妻イオカステーと結婚します。そして子供が生まれました。(ここでお告げが本物になる)しばらくして、ラーイオス王の殺害者を捜索するよう命令されて、従者の口からオイディプスに真実が告げられます。そして自身をその国から追放するよう頼んで、自ら乞食になりました。

◇世界構築のさまざまな要素


物語世界はたくさんの要素から作られます。その中でも世界構築の主要な要素としてキャラクター設定とバックストーリーがあげられます。
1つ目のキャラクター設定が重要であるのは、物語を作るうえでキャラクターが最もその作品の印象を左右するからです。そのために、まずはビジュアル設定から動作設定までキャラクターそれぞれに役割があります。これについては、「02 キャラクター設定」で詳しいことが書かれています。
2つ目のバックストーリーについては、その物語のバックストーリーを知ることで、よりオーディエンスをその物語世界に引き込むことが出来るという点から重要だと思います。これは話が進むにつれ徐々に明かされるものなのでその物語をより面白くしてくれます。詳しくは「03 バックストーリー」を読んでみてください。

◇物語世界の整合性問題


人気のある物語に共通していることは、物語世界に整合性があることです。整合性はバックストーリーや物語世界の時間の流れから作られます。しかし、それと同時に非整合性が生じることもあります。そのため、バックストーリーを作る際は注意が必要です。また物語世界の時間の流れの辻褄合わせのため、語り手というものが存在し、見えていなかった時間の流れが見えるようになります。これによりオーディエンスは物語の内容を理解することができ、満足度に影響すると考えられます。

◇まとめ


物語世界を構築する要素は私たちが想像するよりもたくさんあることがわかりました。特にキャラクター設定やバックストーリーの存在が物語の人気度を高めると感じました。そしてオーディエンスから人気な物語は共通して、しっかりとした物語世界の構築、物語世界の整合性があると思いました。

担当者:長島莉子

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