09.物語のタイムライン

はじめに
私が取り上げる内容は”物語のタイムライン”についてです。
前提として物語のタイムラインは、物語を要約して簡単な表などにまとめたものを指すとします。
さらに物語以外の作品(アイドルや会社など)は、起こった行事の年表となるものになってしまうため物語ではないので除外して考えます。
また、物語の全体にフォーカスを当てているので、あらすじとは差異化して考えていきます。

ー目次ー
◆物語のタイムラインの種別化
◆タイムラインから見る物語の手法
◆語り手の位置
◆外的要因によるタイムラインの変化
◆まとめ

物語のタイムラインの種別化


物語では、物語の主人公の主観的な一人称視点のタイムラインと客観的な第三者視点のタイムラインの2つの種類があります。
一人称視点の特徴は、主人公の見たり聞いたりしたものに対する心理を繊細に表現することが可能です。
しかし、主人公がいない場面などはタイムラインが進まず、主人公の視点を通すので客観的な表現は苦手です。
三人称視点の特徴は、客観的なナレーターが話している形式なので、複数の登場人物の表現をすることが可能です。
一人称視点のように誰かの視点を通さないため、客観的な事実を表現するのに向いています。

タイムラインから見る物語の手法


タイムラインを見ると作品にもよりますが、大きく2つの手法がみられることがあります。
1つ目は昔の事柄を後から語る”後説法”です。
これはフラッシュバック(回想シーン)が代表的な例となります。
物語の最中に過去の出来事のシーンを挿入することで、進行中のストーリーの背景を補完する効果があります。
ちなみにこの後説法にも2つ種類があり、物語の初めのほうに戻る内的後設法と、物語の始まる前の過去を語る外的後説法があります。
2つ目はこれから起こる事柄を先取りして語る”先説法”です。
これはフラッシュフォワードが代表的な例となります。
将来起こることが予想され、その出来事を表す効果があります。特に未来予知する映画などで使用されます。
※伏線と類似していますが、先説法は伏線の意味などもすべて説明してしまうので別だと私は考えます。

語り手の位置


上記では物語のタイムラインの内容に注目しましたが、次にそのタイムラインを構成する上で重要な作成者(語り手)の視点にフォーカスを当てていきます。
語り手が物語世界の外から語る”物語世界外的”と、物語の内部から語る”物語世界内的”があります。
物語世界外的は、語り手が物語世界に登場人物として現れないことです。
物語世界内的は、語り手が物語世界に登場人物としての役割があることです。
また、語り手が登場人物を「私」と一人称代名詞で言いかえすることがある等質物語世界的と、語り手が「私」と指示することが一切なく、登場人物として登場しない異質物語世界的があります。
その中でも異質物語世界的は、三人称一元視点と三人称多元視点に分けることができます。
例外として、未来も過去もなんでも知っているという設定の神の視点というものも作品によっては存在します。

外的要因によるタイムラインの変化


雑誌ならページ数、TVや映画館で放映する映像作品には決まった時間・期間が割り当てられ、この制限の中で作品は作られることになります。
そのため、当初予定していたキャラの登場やシーンが減らされたり、展開を駆け足にせざるを得なくなる事も発生することがあります。
そのような外的要因によるタイムラインの変化の仕方に焦点を当てていきます。
第一に「キャラクターの増減」が挙げられます。
漫画やアニメの場合、連載や放送が長期化するとエピソードごとにキャラを追加していく必要性が強く、特に人気の出たキャラは本来の登場エピソードが終了しても、ゲストや準レギュラーとして出続けるケースが多いです。しかし逆に、特にマンガ原作のアニメだと、本来なら登場すべきキャラクターを省いたり、チョイ役程度にしか出れなかったりといった事態が多発することもあります。
第二に「ストーリーの短縮」が挙げられます。
原作があるアニメなどであれば、原作で起こった出来事が起こらなくなったり、別の事件とひとまとめにされたりします。また分岐によって謎が解明されていくゲーム作品のアニメ化の場合では別ルートの情報をアニメオリジナルエピソードで補って、一本道のアニメに別ルートの情報を盛り込みつつも事実上の短縮を行ったりもします。
また、短縮とは若干異なるが、テレビで放送する際にグロシーンやエロシーンの関係でカットされるような事も稀にあります。
第三に「強引なオチ」が挙げられます。
本来は長期間の掲載や放送を要するエピソードを、尺の関係からやむを得ず強引に締めるという手法です。余分なエピソードの追加や、オチを引っ張り過ぎた場合に起こり得るパターンとなります。
最悪の場合は、そのまま打ち切りもあり得ます。
第四に「引き伸ばし」が挙げられます。
本来はあっさりと終わるはずが、後に控えた内容の制作に間に合わなかったり、想定した以上に反響が大きかった場合に発生するパターンです。
原作付きのアニメの場合、長期放送になると原作に放送採用が追いついてしまうことがよく起こってしまいます。その場合には、オリジナルエピソードを追加したり、本来は一話で収まる内容を数話ぐらいまで引き延ばしたりして、原作が再びアニメ放送より一定以上リードできるようにすることが多いです。
第五に「尺余り」が挙げられます。
昨今は無くなったが、特にお笑いバラエティーなどの検証コーナーで取り上げた問題が、思った以上にあっさりと解決したり、無計画にシナリオを汲んだ結果として放送時間を余してしまった場合に起きます。
第六に「特典映像化」が挙げられます。
本来は描かれるべきエピソードが、放送時間の尺の関係で挿入できずに終わったしまった場合に起き得ます。
特に本編の切っ掛けとなったエピソードなどで、主人公や周辺人物が登場しないものの、そのエピソードを語るには必要な話等が多く、ビデオ映像として作製し、売上にも貢献させようとする手法で使われることが多いです。

まとめ


”物語のタイムライン”は、視点別でタイムラインが種別化されており、さらにタイムラインの内容に焦点をあてると大きな手法が使い分けられていることがわかりました。
次にそのタイムラインを構成する作成者(語り手)に注目すると、その物語にかかわっているのか否かで分類され、それは時には神の視点という作品自体を特徴ずけるようなものが採用されていて興味深いと私は感じました。
そして物語のタイムラインは、尺などが決まっている映画や雑誌などの外的要因によって型にはまろうとすると変化を強いられてしまいますが、それが変化したことにより大衆に受け止めやすくなったりすることも事実なので、決して変化することが悪影響ということだけではないのもまた興味深い関係性が表れていて面白いなと感じました。

担当者:杉山 巧実

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