15.必要とした時間

必要とした時間とは 

 私たちトランスメディア論のチームが取り扱った作品は、作品によって「必要とした時間」が存在します。この「必要とした時間」という言葉には様々な意味がありますが、ここでは主に①コンテンツの成立にかかった時間、②大規模に認知又は流行するのにかかった時間③ブームの上がり下がり、の意味で使っていきたいと思います。 

はじめに 

 チームが取り扱った作品のコンテンツが成立した時間について調べました。すると、ほとんどの作品はピーナッツ(スヌーピー)のような短期間でコンテンツの成立だけではなく、ブームにまで発展した作品(以下ピーナッツ型)と、ムーミンのように少しずつ時間をかけて世界中の人に愛されるようになった作品(以下ムーミン型)の2タイプにざっくり分けられるのではないか?と思いました。次の段落からピーナッツ型とムーミン型についてそれぞれの公式サイトから年表を引用して、作品の概要と一緒に説明したいと思います。 

ピーナッツ型 

1950 漫画連載開始 
1952 単行本化 
1955 作者米国漫画家協会にて初受賞&コダック社カメラの取扱説明書にピーナッツキャラが採用 
1958 ☆スヌーピー初プラスティックフィギュア→2次元(紙媒体)から3次元へ(人形) 
1965 ☆TVアニメ化→静止画から動画へ 
1967☆ブロードウェイでミュージカル化→二次元(アニメ)から三次元実写へ
1969 映画化 
(ピーナッツの歴史 https://www.snoopy.co.jp/history/)  

 ピーナッツは、1950年10月2日にアメリカの新聞7紙に、連載コミックとして初登場しました。その後米国漫画家協会でのリューベント賞受賞や、カメラの取り扱い説明書へのキャラクター採用などを経て、1958年にスヌーピーが初めてプラスチックフィギュア化されました。この時にピーナッツは、2次元の紙媒体から3次元のフィギュアへと初めてトランスメディア化を果たしました。1965年にはテレビアニメ化され、静止画から動画へとメディアを発展させました。さらにその2年後には、ブロードウェイでミュージカル化しました。ここにも2次元のアニメから3次元の実写へとメディア展開がされています。ピーナッツの人気はアメリカだけでなく、世界中でブームが起こり、愛されるようになりました。現在は、70周年を記念したイベントやグッズの制作なども行われています。日本では、2年半の期間限定だったスヌーピーミュージアムが、2019年の冬に東京の南町田にリニューアルオープンしました。このミュージアムは4階建てで、以前六本木で開催されていた期間限定ミュージアムよりも約2倍スペースが広がりました。それにより、充実した常設展の他にも貴重な原画を展示する企画展が半年ごとの開催で行われています。このように、ピーナッツは20年間の間に様々なトランスメディアへと変化を遂げました。年表の一部抜粋だけでも、ピーナッツは2次元と3次元の間を行き来して新規ユーザーの獲得や既存のユーザーにも刺激を与えることに成功しました。トランスメディア論で取り扱った作品で言うと、コジコジやハリー・ポッター、ポケットモンスターなどがピーナッツ型にあてはまると私は考えます。

 ムーミン型 

1934 初ムーミン(水彩画) 
1945☆小説初出版→落書きから物語へ 
1947 スゥェーデン語形新聞で漫画ムーミン連載&フレスコ画 
1949☆ムーミン劇→初実写化 
1952 絵本初出版 
1959☆テレビシリーズ人形劇ムーミン放送開始 
1969☆日本でアニメ放送開始 
1970 小説最終巻 
1973 ムーミン谷実写化 
1974 オペラ 
1987 フィンランドの図書館内にムーミン谷博物館オープン 
1990 ☆『楽しいムーミン一家』世界60カ国にて放送→世界中で人気に 
1993☆ムーミンワールドオープン→読者参加型 
2014☆ムーミン新作映画公開 
2015 バレエ作品になる 
2017 ムーミン谷博物館が移動して世界唯一のムーミン美術館に。 
2019 新作アニメシリーズスタート&埼玉県にムーミンバレーパークオープン  
ムーミンの歴史(https://www.moomin.co.jp/history)  

 ムーミンが初めて出てきたのは1934年の水彩画の中でした。1945年にムーミン小説が初出版されましたが、発行部数はわずかで初版で絶版となったきり、1991年まで再販されない「幻の作品」でした。この時に1920年代に書かれた落書き(ムーミンの原型)から物語へとトランスメディアを果たしました。1949年には初のムーミン劇がヘルシンキで上演されました。ここで初実写化のトランスメディアが起こります。絵本の初出版やテレビでの人形劇ムーミンの放送開始を経て、1969年に日本でアニメ放送が開始されました。3年後には続編も放送され、日本中でムーミンが人気になりました。ムーミンは日本だけではなく、作者の出身地フィンランドでも、図書館内にムーミン谷博物館をオープンするなど、地元の人々にも愛されるコンテンツになりました。1990年には『楽しいムーミン一家』のアニメシリーズが日本で公開されました。このシリーズは世界60カ国で繰り返し放送され、ムーミンは世界中でさらに人気を博しました。さらに人気を博しました。初めは、出版した小説の発行部数が少なく絶版してしまうなどありましたが、フィンランドや日本をはじめ世界中で愛されるコンテンツへと、ムーミンは時間をかけて徐々に成長していきました。トランスメディア論で取り扱った作品で言うと、MARVELや世界遺産があてはまると私は考えます。

まとめ

 ピーナッツ型やムーミン型のように1つのコンテンツが他の媒体に展開するには、かかる時間がその時の人気や状況によって異なる事がわかりました。イラストから始まったものは、同じ紙媒体で漫画や小説などに展開するのが数年単位で行われるのに対して、紙媒体から映像メディアへの発展は10年単位で時間がかかるなど、対メディアが変わるとなるとやはり時間がかかる印象がありました。この記事では紹介しきれなかったのですが、このような従来から行われている「原作」から様々なメディアに展開していくものとはほぼ逆の設定である「オールメディアプロジェクト」についても、時間があればまとめたいなと思いました。

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