第3章では映画に用いられるAngle & Hightについて説明します。この章では被写体に対してカメラを向ける角度とカメラの高さに重点を置いて紹介します。ただカメラの位置や射線を変更するだけの話ですが、角度や高さは私たちがどのように被写体を認識するかに大きく関わってきます。
被写体を強大に見せるか弱小に見せるかも写す角度や高さを変えることで表現することができるのです。
Angle
Angleはカメラを構える角度です。水平を基準としてそれぞれ「Low Angle(低い位置から見上げる角度)」、「High Angle(高い位置から見下ろす)、「Overhead(被写体の直上)」といったようにカメラを向ける角度を変えることでそれぞれどのような効果を生むことができるのでしょうか。
1.Low Angle Shot
低い位置から見上げるショットです。被写体に見下ろされているように見せることができるため、被写体をより強く大きな存在であるように表現することができます。
最終的な障壁となる敵役にも修行を経て強くなった主人公にも活用することができます。これは被写体が人の場合だけに有効なわけではなく、「壁」などにも使えます。例えばベルリンの壁を見上げるショットを撮影した場合、ベルリンの壁が物理的な意味でも精神的な意味でも人々の障壁になっているという様子を表現することができます。
2.High Angle Shot
高い位置から見下ろすショットです。高い位置から無力な人々を見下ろしているように見せることができるため、被写体をより弱く小さな存在であるように表現することができます。
Low Angle Shotと交互に使うことで2者の間にあるパワーバランスを表現することができます。通常は登場人物を身体的にも精神的にも縮小させるための表現として使われることが多いですが、鳥瞰的な視点であるため広く都市や自然を見下ろして環境を決定づける意図で使われることもあります。
3.Overhead Shot
被写体の真上にあるカメラで真っすぐ下を写したショットです。「神の視点」とも解釈できるため、登場人物の行動や環境の詳細を複雑なところまで客観的に把握することができます。
撮影の際はオーバーヘッド・リグというOverhead Shotを撮影する専用の機器を使って撮影しています。
4.Dutch Angle Shot
これまで、上もしくは下から角度をつける撮影方法を紹介してきましたがDutch Angleはカメラを水平方向に左(もしくは右)に傾ける手法です。
被写体の不安定感を生み出すことから見ている人にも不安定で奇妙な印象を与えることができます。また、被写体の大小関係も意図的に歪めることができるため、大きなものをさらに大きく、小さなものをさらに小さく見せることが可能です。
奇妙に見せるという効果が強いためか、CMにはあまり活用されません。
Hight
Hightはカメラを構える高さです。角度同様に高さを工夫することで小さいものを大きく見せる工夫もできます。
基本は第三者の目の高さですが、場合によってカメラを低く構えることで小さな足で踏み込む一歩も強靭な一歩として印象付けることができます。
ここでは、目・肩・腰・膝。地面の高さに設定したとき、それぞれどのような効果を生むのかを紹介していきます。
5.Eye Level Shot
人の目の高さに合わせて撮影されたショットです。最も自然で一般的で使用頻度の高いショットです。中立的なショットとも言えるため、この高さを基準として他の高さからとった場合がどのように映るか考えていきます。
6.Shoulder Level Shot
肩の高さに合わせて撮影されたショットです。僅かに低い位置(Low Angle Shot)と錯覚させたり、一緒に使われたりするケースが多いです。
背が高い登場人物の肩越しに撮影した場合は自然と見下ろす視点(High Angle Shot)になり、背が低い登場人物の肩越しに撮影した場合は(Low Angle Shot)となるため、登場人物間の物理的、精神的なパワーバランスを表現することもできます。関係性を表せることからSingle Shotよりは、Two Shotで使われる場合が多く、Eye Level Shotの次に用いられる頻度が多いです。
7.Hip Level Shot
腰の高さに合わせて撮影されたショットです。腰とは銃を収納したり、帯刀したりする場所であり、ハリー・ポッターでは、魔法使いが杖を収納している場所です。その為、対戦要素のあるアクションシーンがある映画で主に用いられるショットです。
逆に言えば、腰に武器を携えるような設定がない映像作品ではあまり用いられないショットであるともいえるでしょう。
8.Knee Level Shot
膝の高さに合わせて撮影されたショットです。走っている様子や必死に自転車を漕ぐ様子はこのショットが用いられます。(もちろんタイヤを撮影して車が駆ける様子もこのショットです。)
Low Angle Shotと併用されることが多いため、移動の躍動感を表す以外の目的でも使われます。マトリックスにて主人公のネオが上体を反らして銃弾をよけるシーンもカメラの高さはKnee Levelに位置付けられています。
9.Ground Level Shot
地表の高さに合わせて撮影されたショットです。その為、登場人物の靴の動きを撮影していることが多いため、一般的に登場人物の「移動」を追跡している場合に多く活用されます。
映像作品において、多用はされませんが最低1回はさりげなく使っていることが多いといった印象があるショットです。